為替予約
世界的にみると貿易の決済はアメリカドルとユーロで7割程度占められています。取引先と円以外の通貨で取引する場合、その為替リスクは日本側が負います。リスク(=損失)はできるだけ避けなければなりません
良い円高も悪い円安もない
外国為替リスクを負う
外国通貨でビジネス取引をするなら為替リスクは絶対意識しなければなりません。ドル高/円安では(円換算で)売上高は増加し、ドル安/円高では(円換算で)仕入額は下がります。為替は日々変動しますので今日の為替レートで計算したドルでの売上(=計上した売掛金)は30日後ドル安/円高であったら円換算で目減りしますし(為替差損)、逆にドルでの仕入(=計上した買掛金)は円換算したら安く(為替差益)なります。ドル高/円安は輸出に有利でドル安/円高は輸入での追い風です。それだけです。いい悪いは別の問題です。
実益・実損になるとは限らない
この為替差益/為替差損は帳簿上だけの話になることもあります。弊社の例ですがこんなようなことがありました。
2024年5月
売掛金 $10,000 為替レート ¥145/$
2024年6月 弊社決算のため ¥160/$で売掛金を洗替え
2024年7月 売掛金$10,000回収 当日の為替レートは¥150/$
¥150-¥160 で ¥10/$の為替差損 ($10,000 x -¥10 で 7月に10万円の為替差損計上)
しかし弊社は¥145/$で回収できれば十分でしたのでこの10万円の為替差損は帳簿上のことだけです。
実損失はもちろんありえる
もちろん”実害”は往々にしてあります。先の例では為替が¥145/$よりドル安/円高になると実害のある為替差損になります。”実害”(リスク)を回避する手段、中小企業が取れる策が為替予約です。他にも凝ったリスクヘッジ策(金融商品)はありますが中小企業がすぐにかつ安全に使えるのはこれだけです。
為替予約の基本
要は先物
為替予約とは要は先物取引です。乱暴ですがFXと基本は同じです。ただし仕組みが単純なので利殖には向きません。あくまで商売の決済で使います(ちなみに2024年現在、利殖で為替予約を進めてくる金融機関はありません)。為替予約を使う場合は今まで以上にTTB, TTS そして日々発表される外国為替の中値(TVニュースで出てくる”為替相場”)に注意しましょう。この先外貨がどう動くか関心と勉強がないと為替予約(=先物取引)はできません。
TTSとTTB
為替予約を使う時は TTSとTTBを混同しないようにしてください。TTSは支払いに使う、TTBは 債権の回収に使う言葉だと覚えてください。
ドルで(債務を)払うなどのため手元の円をドルにする時→TTSで表記されているレート
ドル債権や手元のドル口座のお金を円に交換する時 →TTBで表記されているレート
為替予約は未来のどの時点でドルをいくらで決済するかを決めるものですので、未来の時点をまず決めます。例えば年度末に備えて3月1日から3月31日の間に決済できるようにする(設定をする)などです。為替予約は未来に行くほどその値は安くなります。例えば現時点が¥150/$だとすると1月先の予約値は ¥145/$、2ヶ月先は ¥142/$ といった具合にドル値は安くなります。
社内レートを設定する
特定の期間、例えば1−3月とか1年とか為替レートを会社独自に決めて運用すると為替の管理が幾分楽になります。それは為替予約をする時にも役立ちます。今月¥140/$で決めた売掛金が翌月末いくらのレートで入ってくるのか、その時点ではわからないのです。ある期間中は¥140/$だと決めてしまえば差益差損がどうでるか、どうリスクを回避すべきかわかりやすくなります。会社の規模にかかわらず設定することができます。リスク回避の情報が増えるので設定することをお勧めします。
申込みと使い方
銀行に申し込む
為替予約を使うには銀行にまず申し込みをします。銀行内の稟議案件になりますが、企業の業績が著しく悪ければそれほど厳しいものにはならないと思います。
オンラインアプリで操作する
現在はどこの銀行でもオンラインアプリでの操作です。個人的には使いやすく作られているものはほとんどないと経験上感じます。操作に慣れるまで手元にマニュアルは必須です。経験上、あまり複数の方に外為アプリの操作権限は与えない方がいいと思います。
キャンセルは絶対できない
為替予約は締結をするとキャンセルができません。相殺の反対取引をするしかありません。弊社も数度TTSとTTBの為替予約を間違えたことがあります。すぐに”反対取引”をして契約を解消しましたが為替差損が出ることが多いです。
まとめ
銀行の企業の担当者(第一線の営業さん)で外国為替関連に詳しい方はほとんどいないと思ったほうがいいです。国内のことばかり見ているのでおそらく勉強してるヒマもないと思われます。利用する側が勉強しないと大火傷しないとも限りません。